いなにわうどん

うどんの話に見せかけて技術的な話をしたい(できない)

私から見たメ創

初対面の人間に対して自己紹介などをすると「情報メディア創成学類ってどんな学類?」と聞かれることが未だにあります。

夏休みは家に篭って無限に労働をしていたのですが、秋学期も始まり人間と飯に行ったりすることで、つくばに大分気持ちが*1戻ってきたので、このあたりで情報メディア創成学類(以下、メ創)に 3 年ほど在籍して感じた特徴*2を述べておきたいと思います*3

入試

入り口の話から始めておくと、一般、推薦、AC(アドミッションセンター入試)、総合学域群からの移行などが存在します。以下に大まかな概況を述べます。

入試形態 特徴
一般 共通テスト(旧:センター試験)を突破して入ってきた人々。勉強パワーがある。すごい
推薦 高校の内申を取りつつ、推薦入試を受けて入ってきた人々。すごい
AC コンピュータに対する実力を兼ね備えて入ってきた人々。すごい
総合からの移行 激烈な GPA バトルを乗り越えてきた人々。すごい
科オリ*4 入試枠を潰した

ひとびと

人はみなさんかなり良く、全般的に穏やかで、過激な思想や物言いをする人はほとんど見掛けないです*5。おおらかで個を尊重し、全体で群れるというタイプでもないと思います。人を選べばネットミームなども大体通じます。

人間関係に関していえば、学類全体を把握できている訳ではないのですが*6、一年の初期で大方決まってしまった雰囲気は強いです*7。AC な人達は AC な人々と連んでいて、総合からきた人々も総合出身(?)みたいなネットワークがあるのかなとも思いますが、詳細はわかりません。編入組は編入組で固まって授業等を受けている様子が見受けられます。総合出身の友人が一年の頃からメ創にいれば……と溢している様子は印象的でした。

編入の人々とももう少し交わっていきたい気持ちはあるのですが、いかんせん母集団が違いすぎる上に、機会もないのでなかなか難しいのが現状です。

授業

大抵の授業は応用情報レベルの内容(データ構造とアルゴリズム、データベース、OS、CGI……)+ メディア系(CG、デザイン、音響……)を浅く広く触れていくという感じです。加えて数学(情報数学、線形、確率、微積)もあります。総合学域群制度の導入に伴い、一年のうちにプログラムに触れる機会は入門程度に限られます*8。学類全体の GPA 平均は 3.** 程度あり、成績に関しては課題を出せば取れるものがほとんどだと思います。

どこの大学でもそうだとは思いますが、授業を聞いていれば瞬く間に成長してコンピュータに詳しくになれる超絶カリキュラムなんてものは存在せず*9、結局のところは実直に自学自習を積み重ねていくほかに生き残る術はない印象です。

取ってよかった科目

受講した GC 開講*10の授業のなかから、インパクトの強かったものをいくつか挙げておきます。

  • コンテンツ入門
    名物講義。ochyai 先生が有名人と対談するのを見て Twitter で実況する。昨年はひろゆき氏とのレスバが繰り広げられていて大学でそんなものを目にする機会があるのかと一驚した
  • プログラミング(必修)
    C 言語が書けるようになる。難易度が急激に跳ね上がったためかなり厄介な授業扱いをされていたが、実はとても良い授業だったと感じます
  • 情報メディア特別演習
    学生の持ち込みテーマで演習をする。大半の先生は毎週–隔週程度でミーティングを設けてくれるため、教員と触れ合う機会が少ない学生にとっては貴重。たのしい
  • 情報デザインI/II
    情報デザイン I ではデザイン基本のき!を楽しく学ぶ。提出課題をプロジェクタに投影して先生がビシバシと修正する様子は圧巻。II はかなり実践的な内容で、毎週課題を持ち寄って添削してもらう。タイポグラフィにかなり熱のある授業
  • ソフトウェア構成
    手を動かしながら構文解析器や PL/0 コンパイラを作る。資料内容の充実さは圧巻。2時間に亘る期末試験でコンパイラを書かされる
  • 情報メディア実験
    いくつかのテーマから上期/下期で 1 つずつ選択する。希望が多い場合はランダムで抽選。COJT というのを取ると自由に使える部屋が降ってくる

そのほかには、直接メ創と関係があるわけではありませんが、フレセミ*11等で人間とワイワイと触れ合ったり、芸専(芸術専門学群)の科目を取って芸専すげ〜と唸ったりしたのも懐かしい記憶です。

呼び方

「メ創」か「mast」、教員は創成と呼ぶ。

興味関心

千差万別。音楽やデザイン、写真が趣味という人はかなり多いです。LaTeX よりも Adobe が好きです。お酒は……世の大学生であればみんな好きだと思います。

一般にメ創人間はものづくりに興味があると見做されていて、確かにそうだとは思いますが、その向き先は必ずしもコンピュータに限らないといった表現が適切であると思われます。肝心の情報分野はどうなんやというのは次の話に回します。

技術

AC や編入の方々はかなり強いです。先輩や同期が国際学会に accept されていたり、飛び級をしていたりするのを凄いな〜と指を咥えて眺めていたら三年が経ちました*12。一般や総合で入って来た方々の中にも強い人は一定数いて、比較的初歩から勉強をはじめて、言語処理系を作り学会発表まで行った人もいるので、本当に適性というか各々の気概次第なのだと思います。

しかしながらボリュームゾーンとしては、コンピュータに関心!*13という人々は案外少ないのかな、とも思います*14Hello World 程度なら……の状態で入学するも、そもそも情報にあまり興味が持てなかった*15、あるいは C 言語をやらされて心を折られた人々を周囲ではそれなりに観測しました。それこそ coins=情報科学類のオタクと三学(第三エリア)周辺で立ち話なんかをすると、高確率で濃密な技術の話を聞いて大学を感じたりもするのですが、メ創ではそうした光景を見掛ける機会は少ないです*16

分断と対立

情報学群全般として「技術に関心が強い人々の少し選民的に寄った思想」と「そうでない人々から向けられる嫌悪」が対立する構図はうっすら成り立つと感じています。端的に書けば「ろくにコードも書かない人々が……」vs「情報オタクくん笑」みたいなことです。みんななかよくなってほしいですよね。ただメ創に限っていえばそうした対立はあまり見られないので安心です。

文化

歴史がある学類でもないので、文化の希薄さは往々にして感じます。度々の比較になってしまって恐縮ですが、coins でいうところの coins ラウンジや WORD 編集部の類の空間*17は少ないです。この辺りはコロナ禍で大分制限を受けてきたようで、最近になってようやくクリラボが空いたという噂を聞きました。

春に書いたエントリにも述べた話で、人間関係や文化を維持するには物理的な何かが必要で、部屋があるとそこに濃密な人々が集うようになるので、そうした場の必要性は強く痛感します。

立地・生活

所在は春日エリア*18です。つくばセンターつくば駅)から近いのは嬉しいですよね。一方で春日エリアは死の地であるため、人々の気配が感じられない点は寂しいところです。履修等の関係もあって今年はわりと三学周辺に滞在する時間が長かったのですが、やはり本学は活気があっていいな、と訪れる度に思います。

学食も営業していますが、周囲の飲食店に食べに行く機会のほうが圧倒的に多いです。学内の不便さは周辺環境の充実によって補われている節があります。

研究室配属

闇に包まれている

インターネット

入学当初から public internet で大騒ぎ*19をしている姿はそれほど見かけないです……が遍在はしていると思います。coins20 の代は自前でプライベートな Misskey 鯖を立てて授業実況等に役立てていたという噂もありますが、メ創ではそうした話は特に聞かないです。身内の Discord 鯖などはそれなりに立っている印象です。

むすびにかえて

インターネットという場である以上(自戒な意味も含めて)、ある程度批判的なトーンにならざるを得ない点はあるのですが、そうはいっても学類の人々はほんとうに良い人ばかりで、メ創に来てよかったな!!と折に触れて感じています。コンピュータ力(ぢから)やオタク文化、設備面に関しては coins に見劣りする部分は確かにあります。それでも人々の穏和さや個性、やさしさに救われる部分は多く、結局のところ技術よりも人なんじゃない?と実感することが多い、というところが総括です。

どこに向けて書いたかがよく分からない文章になってしまったので、アドカレの季節に再投稿してシュッと紛れ込ませてあげたいです。

*1:物理的にも

*2:「私から見たメ創」ということで、あくまで個人としての所感に過ぎないという点に留意いただければ幸いです

*3:SEO 的に引っ掛かりやすい記事は表層的な紹介しか書かれていない気がする

*4:国際科学オリンピック特別入試

*5:観測範囲で

*6:学類全体で〇〇というイベントはほとんど存在せず、実際のところは入学時から半分程度は顔も分からないのが現状

*7:コロナ禍で長らく対面授業がなかったことも影響している

*8:これが激おもしろ話で、一年次では Python ってものがあって……程度の話しか登場しないのに 2 年次の初頭にいきなり C 言語に触れさせられかなり四苦八苦する

*9:coins=情報科学類は情報科学を標榜する学類なだけあって、もう少しきちんと CS をやっている印象はあります

*10:情報メディア創成学類開講

*11:初年度に取る大学生活にゅうもん!みたいな授業

*12:自分は特に何もしていない

*13:技術力云々というより、関心の時点で心を折られている人が多い印象

*14:もっとも、所属集団を一括りにして ○○ だから ✕✕ な人が集まる!のようにステレオタイプを語ることに限界があるのではないかとも感じる昨今です

*15:これは学類側のブランディング?も影響しているのではないか、と疑っています。対外的には芸術やメディアアートの部分を押し出している一方で、カリキュラムや研究室はとどのつまり情報学群のそれなので、そのあたりに生じるギャップはあるよね〜とこの前友人と話していました

*16:日常会話で HTTP とか Docker みたいな話が出てくることはまずない

*17:その他にも色々とあるらしい

*18:キャンパスではない

*19:そもそもB3になってまだ Twitter に明け暮れてる人がいるんですか?(大ブーメラン)