いなにわうどん

うどんの話に見せかけて技術的な話をしたい(できない)

なぜ我々は筑波大を便利にすることができなかったのか?

早いもので筑波に来て 3 度目の春を迎えます。2 年前の春を憶えていますか。

筑波大学を便利にするサークルが爆誕

元々は大学の KdB と呼ばれる開設科目データベースがダウンし、その代替サイト「KdB もどき」を作成したことに端を発します*1。懐かしいですね。
ミラーを立ち上げただけと言えばそうなのですが、新入生が大学をディスりながらシステム開発!みたいな構図が予想以上にウケたっぽく、Twitter がバズったりメディアに取り上げられたりしている間にサークルを新設する流れになりました*2

togetter.com

筑波大には学生が開発した数多のサービスやアプリケーションが存在しますが、その多くは個人レベルで開発が行われているため、開発者が大学を離籍するとシステムが保守されなくなる傾向にあります*3。そこで、筑波大学の学生生活を便利にする各種サービスを総括的に管理・保守することで持続可能な運営を目指そう、という設立理念に基づいて立ち上がったサークルが「筑波大学を便利にする会」です。趣旨を見るととても良さそうに思えます。

ところが、このサークルは一年持たずして息絶えることになります。

かろうじて GitHubリポジトリ*4は残っていますが、Slack のワークスペースはほとんど動かず、公認サークルも外れてしまいました。筑波大学を便利にする会以外にも、入学してからの 2 年間で有象無象のオンラインサークルや Discord 鯖が立ち上がっては消えて……を繰り返していた気がします*5。これらのサークルはなぜ持続しないのでしょうか、個人的な見解として、その理由として考えたことをいくつか述べます。

オンライン主体のサークルは持続しない

部屋がないサークルは持続しない、これはかなり有力な仮説だと思います。
筑波大学内の持続的な情報系の団体といえば以下に掲げる団体が代表的ですが、これらの団体は広かれ狭かれ活動拠点を有しています*6。そこでワイワイガヤガヤしたり飯に行ったりしている間に仲良くなることで活動を持続しているようです*7

  • WORD 編集部*8
  • 全代会の情報特別委員会*9
  • 学園祭実行委員会の情報メディアシステム局(jsys)*10

ところが、筑波大学を便利にする会が生まれた当時はコロナ渦の最中*11であり、課外活動への締め付けも厳しかったことから Slack を主体に活動内容を据えた結果、全く持続しなかったという経緯を持ちます。かくして Slack も有料化されてしまったため、現在では当時のログすらも残っていません。なんとも儚いですね。
筑波大を便利にする会でも対面ミーティングを行おうと計画されたことはあるものの、なんだかんだで霧散した憶えがあります。また、メンバーの一部がリアルでの交流を有している場合、そこだけでご飯に行ってしまったりして、サークル全体として成立しなくなる場合もあるように捉えています。

当初からメンバーを増やしすぎてはいけない

前述の通りメディアで宣伝されたり、Twitter での告知ツイートも相当拡散された背景を持つため、情報技術への興味の有無はともかく、とりあえず入ってみよう的な人々も多く集まりました。その結果、玉石混交な状態に陥ってしまい、かなり心理的安全性の低い集団になってしまったと感じています。Slack でも誹謗中傷に近いメッセージが飛び交うこともありました…… メンバーは無闇に増えれば良いものではありません。

また、技術系サークルではメンバーの技術力の差も往々にして問題になります。筑波大学を便利にする会では、以下のような人々が集まりました。

  • A. 既に技術を有しており、要は強い人間
  • B. プログラミングも基礎程度なら……の人々
  • C. これからがんばります

A. の人々は率先して開発をしていきたい一方で、C. の人々はプログラミングを教えてもらえることを期待しているわけです。そうなると当然ながら A. の人々の発言権は強まり、C. の人々は徐々にフェードアウトしていくのが自然の摂理です。教育云々の話も出たように記憶していますが、その頃には C. の人々は脱落しており、メンバーも大半は既に幽霊部員化しています。

ブレる方向性

方向性も定まりませんでした。アプリケーション開発などを活動内容に据えるのが適切かと思っていたのですが、「筑波大学を便利にするなら学内の掃除から始めれば良いんじゃね?」といった意見も出てきます。掃除も悪いことではありませんが、設立趣旨からは外れているように思えます。
また、副学長を始めとする当局との話し合いの場も設けられたのですが、入試のときに看板を設置したい等、議論は錯綜していたように感じました*12

集団でアプリを作ろうと議論してはいけない

いけない!と断定できるほどの話でもないですが、初期段階で議論から入るのは得策でないと考えています。便利にする会でも色々とアイデアは出ていましたが、「既に〇〇がある」「そんなことをやっても意味がない」と否定する意見が多く見られました。議論も然ることながら、まずは手を動してみることが大切だと思います。

個人的には、学内で使われる(学生有志による)筋の良いアプリケーション等は、個人レベル、あるいはごく少人数のチームでこれ便利じゃね?と開発されたものが徐々に浸透する印象を持っています。筑波大で時間割アプリとして有名な Twin:te*13 も、発起人の方が個人的に開発したプロトタイプが発端なようです*14。スタートアップに関する議論でも散見される話ですが、初期段階において面倒な意思決定プロセスを介するべきではありません。

その他に、先ほど述べた技術力やスタンスの違いも影響してきます。モダンな技術の採用や厳格なコードレビューは、ソフトウェア開発の観点からすれば正しい戦略ですが、学生のサークルとしては必ずしも適切ではないように思えます。誰でも PR を投げられるように門戸を広く開けるためには、可能な限り易しい技術スタックを採用したほうが良いですし、コードレビューもレビュアーがいないことには成立しません*15

むすびにかえて

春が近いのでふと思い立って筆を執りました。残念ながら、筑波大学を便利にする会は儚くも消えてしまいましたが、これから誕生する新たなサークルや新入生のみなさんが、豊かな大学生活を送れることを祈念しています。

*1:こちらは現存しており、メンテナンスもされています:https://make-it-tsukuba.github.io/alternative-tsukuba-kdb/

*2:設立の経緯として「こういうサークルあったら面白くね?」と同級生 A が Twitter 上で発言 → 同級生 B がサークル設立の手続きをする、といった流れを踏みました。メンバーとして、事務手続きが得意で開発経験も豊富な同級生 B がサークルの会長に、同級生 A(同学類の友人でよく旅行に行ったりする)、同級生 C(特に面識なし)、私の 3 人が副会長になりました。その他のメンバーも30人以上は存在したと記憶しています

*3:えりたんとか

*4:https://github.com/make-it-tsukuba/

*5:Twitter で観測可能な限りですが

*6:これらの団体は厳密にはサークルではなく、それぞれ学類直下の団体や大学の学生組織であるため、活動面や予算面で優遇された立場にあるのかもしれません

*7:私は jsys に所属していたのですが、週一回対面でご飯に行っていたのと年に一度旅行に行っていた

*8:https://www.word-ac.net/

*9:https://www.stb.tsukuba.ac.jp/~zdk/ipc

*10:https://sohosai.com/committee/

*11:もうすぐ終わる

*12:後に個人的に当局の方と面会した際に、あの話し合いは我々の想定していた内容ではなかった、といった趣旨の意見をいただいた

*13:https://www.twinte.net/

*14:参考:https://twinte.hatenablog.com/entry/2020/05/20/220846

*15:余談ですが、自分が書いたコードを他のメンバーに Twitter 上でボロクソに叩かれたことがあった